事業承継の切り札?株主平等原則の例外「属人的株式」の導入要件とそのリスク

こじろー君

むさし先生!事業承継の話で「属人的株式」という言葉を聞いたんだけど、これは株数に関係なく株主ごとに権利を変えられる魔法の株式ってことかニャ?これを使えば、後継者に議決権を集中させるのも簡単ってことニャ?

むさし先生

こじろー君、鋭いね!でも「魔法」というより「劇薬」に近いんだ。会社法では株主平等原則が基本だけど、特定の要件を満たせば株主ごとに配当や議決権に差をつけられる。ただし、使い方を誤ると裁判で無効にされるリスクもあるんだよ。

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はじめに|青色申告特別控除の改正は何が変わったのか?

中小企業の事業承継では、経営権の承継が最大の課題となります。会社法では、株主は持っている株式の内容と株数に応じて平等に扱われる「株主平等原則」が基本です。しかし、会社法の例外として認められているのが「属人的株式(株主ごとに異なる取扱いの定款の定め)」です。

これは「特定の株主に対して、保有株数に関わらず特別な権利を与える(または制限する)」仕組みです。非公開会社においては、議決権を特定の後継者に集中させたり、創業者に配当を優先したりと、柔軟な事業承継を可能にする強力なツールとなります。


属人的株式が対象とする「3つの権利」

属人的株式の定款の定めによって、株主ごとに扱いを異ならせることができるのは、以下の3つの権利に限られています。

  1. 剰余金の配当を受ける権利
  2. 残余財産の分配を受ける権利
  3. 株主総会における議決権

これらについて、「Aさんには議決権を多く与える」「Bさんには配当を優先する」といった個別の設定が可能になります。

導入のための「3つの必須要件」

この制度は、誰でも簡単に導入できるものではありません。導入には、会社法で定められた厳しい手続きが必要です。

  • 対象企業:譲渡制限会社(非公開会社)であること。
  • 定款記載:定款に、どの株主にどのような特別な取扱いをするかを具体的に記載すること。
  • 決議要件:株主総会における「特殊決議(総議決権の4分の3以上)」の承認を得ること。

この制度は登記が不要なため外部からは見えにくいというメリットがありますが、だからこそ慎重な運用が求められます。

知っておくべき「裁判例」と運用の落とし穴

属人的株式は、非常に強力である反面、使い方を誤ると「株主の基本権を奪う不当なもの」として裁判で無効になるリスクがあります。

例えば、過去の判例(東京地裁立川支部平成25年判決)では、定款変更の手続きを適法に行っていたにもかかわらず、その内容が特定の株主を一方的に排除するなどの不合理なものであったため、無効と判断されたケースがあります。特殊決議という高いハードルを超えても、「なぜこの株主だけ扱いが違うのか」という合理的な理由がなければ、将来的な争いの種になり得るという点には細心の注意が必要です。

トラブル回避のポイント

属人的株式は、事業承継を円滑に進めるための「切り札」になり得ますが、同時に会社法上、非常にデリケートな論点を含んでいます。
導入を検討する際は、専門家を交えて「なぜその設定が必要なのか」という合理的なストーリーを論理的に組み立て、後々の紛争リスクを徹底的に摘み取っておくことが重要です。安易な導入は、将来の経営支配権をめぐる親族間トラブルの原因になりかねません。

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