【退職金の税務】従業員分と役員分をまとめて支給する際の計算と源泉徴収票「摘要欄」の記載ルール

こじろー君

むさし先生!社員から役員になった人が退職するときに、昔の社員時代の退職金と役員の退職金をまとめて支払うことがあるって聞いたのニャ!税金の計算や源泉徴収票の書き方で気をつけることはあるのか教えてほしいのニャ!

むさし先生

こじろー君、従業員分と役員分の退職金を一括支給する場合の『退職所得の計算と源泉徴収票「摘要欄」の記載』のことだね。役員勤続年数が5年以下の『短期役員』にかかる1/2課税除外ルールや重複期間の控除計算に加えて、源泉徴収票の摘要欄への記載事項など注意すべきポイントがいくつもあるんだよ。具体的な計算手順や書き方について詳しく解説するね!

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はじめに|従業員から役員へ昇格した人の退職金支給方法

生え抜きの従業員が取締役などの役員へ昇格した場合、従業員として働いていた期間の退職金(従業員分退職金)の取り扱いには、主に以下の2つの方法があります。

  1. 打切り支給:役員就任時に、それまでの従業員分の退職金を一度精算して支給する方法。
  2. 退任時一括支給:役員を退任して会社を去る時まで、従業員分の退職金支給を繰り延べ、役員分とまとめて一括支給する方法。

「退任時一括支給」を選択した場合、勤続年数のカウントや退職所得控除の計算、さらには「退職所得の源泉徴収票」の記載方法が通常と大きく異なるため、正確な実務処理が求められます。

一括支給時の退職所得計算|特定役員退職手当等と重複期間

役員分と従業員分をまとめて支給する場合、税額計算で特に注意すべきなのが「役員勤続年数が5年以下(短期役員等)」のルールと「使用人兼務役員の重複期間」です。

役員勤続5年以下の1/2課税除外: 役員としての勤続年数が5年以下の場合、「特定役員退職手当等」に該当し、役員分の退職所得控除後の残額に対して「1/2を乗じる特例」が適用されません(全額が課税対象)。一方、従業員分については従来どおり1/2を乗じて計算します。

重複期間の控除額の特例: 使用人兼務役員などで「従業員期間」と「役員期間」が重なっている重複期間がある場合、役員分の退職所得控除額を計算する際、重複期間1年につき20万円(通常40万円の半額)として計算します。

計算例で理解する|退職所得控除の按分と税額算出

国税庁が公表している具体的な計算例で流れを確認してみましょう。

【事例設定】

  • 退職金総額:3,500万円(従業員分 2,500万円 + 役員分 1,000万円)
  • 全勤続期間:24年(うち従業員22年、役員4年、うち重複期間2年)

1. 退職所得控除額の計算

  • 全体(24年)の控除額(A):800万円 + 70万円 × (24年 – 20年) = 1,080万円
  • 役員分(4年)の控除額(B):(重複外2年) 40万円 × 2年 + (重複2年) 20万円 × 2年 = 120万円
  • 従業員分の控除額(A – B):1,080万円 – 120万円 = 960万円

2. 退職所得金額の区分算出

  • 役員分:収入 1,000万円 – 控除 120万円 = 880万円(※5年以下のため1/2なし)
  • 従業員分:(収入 2,500万円 – 控除 960万円) × 1/2 = 770万円(※1/2適用)
  • 課税退職所得金額:880万円 + 770万円 = 1,650万円

このように、控除額を適切に分けた上で税額(所得税・復興特別所得税および住民税)を算出します。

源泉徴収票の書き方|「摘要欄」への必須記載事項

税額計算が無事に完了しても、提出する「退職所得の源泉徴収票」の記載に漏れがあると税務署から是正・確認が入ります。

従業員分と役員分を一括支給する場合、源泉徴収票の「摘要欄」へ以下の事項を忘れずに明記しなければなりません。

  • 役員分の支給額(例:役員退職手当等 1,000万円)
  • 役員としての勤続年数(例:役員勤続 4年)
  • 重複勤続年数(例:重複勤続 2年)

税務署が「特定役員退職手当等の計算が正しく行われているか」をチェックするために不可欠な情報となるため、書き漏らしのないよう国税庁の記載見本等を参考に作成しましょう。

トラブル回避のポイント

役員退職金と従業員退職金の一括支給における最大のトラブルは、「役員勤続5年以下の特定役員ルールを見落とし、役員分の退職所得にも誤って1/2を乗じて計算してしまった結果、源泉徴収税額の過少納付が発生し、追徴課税を受けこと」です。

また、源泉徴収票の「摘要欄」に役員支給額や重複年数の記載を怠り、税務署からの不備指摘や税務調査での説明に追われるケースも目立ちます。

役員昇格時の打切り支給の有無、使用人兼務役員期間の重複チェック、源泉徴収票の摘要欄記載までをセットで事前確認することが最大のトラブル回避へとつながります。

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