
むさし先生、最近知り合いの先生から「医療法人化すると節税になる」って聞いたんだけど、なんだか難しそうで…。本当にそんなに税金が安くなるものかニャ?

それは多くの医師や歯科医師の先生方が関心を持つテーマだね。
医療法人化は、個人のクリニック経営と比べて、税金面で様々なメリットを享受できる可能性があるんだ。今回は、医療法人化について詳しく解説するね!
コラムメニュー
コラムメニュー
はじめに|医療法人化がもたらす税負担の最適化
多くの医師や歯科医師の先生方は、日々の診療に忙殺される中で、税金対策まで手が回らないと感じているかもしれません。個人事業主としてクリニックを運営されている場合、利益が増えるほど個人の所得税負担が大きくなるという課題に直面します。そこで検討したいのが「医療法人化」です。
医療法人化とは、個人で経営していたクリニックを、医療法に基づき設立された法人組織にすることです。これにより、税金の計算方法が個人の所得税から法人税に変わり、節税対策の選択肢が大きく広がります。法人税は、個人の所得税に比べて税率構造が異なるため、一定の利益水準を超えると、法人化した方が税負担を抑えられる可能性があります。
今回は、医療法人化によって具体的にどのような節税効果が期待できるのか、そして医療法人だからこそ活用できる税金対策について、分かりやすく解説します。ご自身のクリニックの未来のために、ぜひこの情報を活用してください。
医療法人の基礎知識と税金の仕組み
医療法人とは、病院、診療所、介護老人保健施設などを開設することを目的として、医療法の規定に基づき設立される法人のことです。一般的に「医療法人○○会」という名称で知られるのは、「社団たる医療法人」、すなわち人の集まりを基盤とした法人を指します。
病院と診療所の違い
医療施設には様々な形態がありますが、主に病床数の違いによって分類されます。
- 病院: 病床数が20床以上の医療機関。医師3名以上の常時勤務が必須とされています。
- 診療所(クリニック): 病床数が19床以下、または無床の医療機関。医師1名から開設が可能です。
一般的に耳にする「クリニック」は上記の診療所を指し、医療法人だけでなく、個人事業主としても開設が可能です。ただし、都道府県によって、診療所を医療法人または個人事業主として開設する手続きが異なる場合があります。
医療法人化の主な利点
診療所を開設するにあたり、個人事業主として開業し、後に医療法人化するというパターンが一般的です。個人事業主としての開業期間がなくとも、医療法人として開業が可能な場合もありますので、開業を予定している都道府県への確認が重要です。ここでは、一般的な流れである個人事業主としての開業から医療法人化する際の主な利点をご紹介します。
- 医師個人の納税負担をコントロールしやすくなる
- 事業展開(分院設立など)が可能になる
- 事業承継が円滑になる
- 対外的な信用力が高まる
医療法人が支払う税金の種類
医療法人が事業活動を行う上で支払う主な税金は以下の通りです。
- 法人税及び地方法人税
- 法人住民税(法人道府県民税・法人市町村民税)
- 事業税
- 消費税及び地方消費税
- 固定資産税
- 償却資産税
- 源泉所得税
- 個人市町村民税(特別徴収)
消費税や固定資産税などは、個人開業医でも医療法人でも原則変わりありません。しかし、医療法人の利益に対する税金は「法人税」として納めることになり、この点が個人開業医の所得税とは大きく異なります。
医療法人化で得られる5つの主要な節税効果
医療法人化することで、これまで個人事業主としては利用できなかった様々な節税対策が可能となり、税負担の最適化につながります。法人の利益と個人の所得をバランス良くコントロールしていくことが重要です。
1. 給与所得控除の適用
個人開業医のクリニックでは、クリニックの利益がそのまま個人の所得となります。一方、医療法人においては、クリニックの利益は法人の所得となり、医師個人の所得は法人から受け取る役員報酬という形になります。この役員報酬は「給与所得」に該当するため、「給与所得控除」を適用することができます。所得金額を計算する際に、役員報酬の額面から給与所得控除額を差し引くことが可能です。これにより、個人の所得税・住民税の負担を軽減できます。
2. 所得の分散による税率最適化
個人開業医の場合、クリニックの利益が増えるほど、個人の所得税率が累進的に高くなり、税負担が大きくなってしまいます。医療法人化することで、クリニックの所得(法人の利益)と医師個人の所得(役員報酬)を明確に分けることが可能になります。 さらに、親族を役員として経営に携わらせることで、適正な範囲内で役員報酬を支払うこともできます。これにより、世帯全体の収入は変わらないまま所得を複数の個人に分散させることが可能となり、各個人の税率を下げることで、世帯全体の納税負担を減らすことができます。
3. 生命保険料の損金算入
個人で生命保険に加入する場合、支払った保険料のうち所得から控除できる金額には一定の上限があります。しかし、医療法人で契約する生命保険(法人契約の生命保険)は、保険の種類によっては保険料を法人の経費(損金)に算入することが可能です。これにより、法人の利益を圧縮し、法人税の負担を軽減できます。ただし、保険のタイプによって損金算入できる割合が異なるため、加入前に保険会社や税理士に確認が必要です。
4. 退職金制度の活用
医療法人では、理事長やその配偶者に対して、死亡退職慰労金や退職慰労金を支給することが可能です。支給した退職金が税法上の「適正額」の範囲内であれば、医療法人において支給した金額の全額を損金として算入することができます。 退職金は、個人の所得税においても、退職所得控除という大きな控除が適用されるため、税負担が大幅に軽減されるメリットがあります。退職金を支給する時期を見越して、役員報酬の設定などを慎重に行う必要があります。
5. 確定拠出年金・確定給付企業年金の活用
医療法人は、従業員の福利厚生の一環として、確定拠出年金(企業型DC)や確定給付企業年金を活用できます。これらの制度における掛金は、医療法人が拠出することで、法人の経費(福利厚生費)として損金算入することができます。 これにより、法人の利益を圧縮し、法人税の負担を軽減できるだけでなく、理事長自身の老後資金の形成にも役立てることができます。
医療法人だからこそ検討したい節税対策
医療法人化したからこそ検討すべき節税対策は、他にも存在します。ただし、これらの対策は“医療法人だからこそできる”わけではないものも含まれますが、医療法人の特性と組み合わせることで、より効果を発揮する可能性があります。
1. MS法人(メディカル・サービス法人)の活用
MS法人とは、「メディカル・サービス法人」の略称で、法令上の医療機関でなくとも設立できる、医療機関運営にかかる事業を行う法人のことです。医療法人は営利目的の事業が禁止されるなど、様々な制約がありますが、MS法人を組み合わせることで、これらのデメリットを回避・補填し、所得を分散させることが主な目的となります。例えば、医療法人が賃貸する不動産の管理業務や、医療機器のリース業務などをMS法人で行い、そこで得た利益を分散させるといった活用方法があります。
2. 介護事業への土地無償提供
介護事業を営む法人が所有する固定資産の中には、非課税となるものがあります。また、自身で所有している場合に限らず、介護事業の利用のために固定資産を無償で貸している場合も非課税になります。医療法人として介護事業を運営することで、固定資産税負担分を節税できる可能性があります。
3. 中古車の社用車購入による減価償却
患者の送迎用や職員のための社用車を購入する場合、新車よりも中古車を購入する方が、節税の観点からはメリットがあります。車は固定資産であり、耐用年数に応じて減価償却費として経費化されます。新車は一般的に5~6年かけて経費に算入されますが、中古車は残りの耐用年数が短く算定されるため、その分短い年数で、かつ購入年度に多くの金額を経費化できる場合があります。
節税対策を行う際の重要な注意点
今回ご紹介した節税対策は、すべて税法や医療法の範囲内で行う必要があります。過度な節税は、税務署から「脱税行為」とみなされ、重加算税などのペナルティが課されるリスクがあります。特に、役員報酬や退職金の金額設定、生命保険の損金算入割合などは、適正な範囲内で行うことが非常に重要です。
トラブル回避のポイント
医療法人化は、税負担の最適化や事業承継の円滑化など、多くのメリットをもたらす一方で、その手続きや税務・会計処理は非常に複雑です。また、医療法人の運営には、医療法や税法、社会保険など、幅広い専門知識が求められます。
ご自身で全てを判断・実行しようとすると、誤った処理をしてしまい、かえって税負担が増えたり、税務調査のリスクが高まったりする可能性があります。また、医療法人と個人の税務、さらにはMS法人を組み合わせる場合など、多岐にわたる知識が必要となります。
医療法人化の検討から、実際の設立手続き、その後の会計・税務顧問、そして各種節税対策の実行に至るまで、医業に精通した税理士のサポートを受けることが、安心してクリニック経営を行うための最も確実な方法と言えるでしょう。
東京武蔵野会計のサポート内容
東京武蔵野会計は、不動産税務に特化した会計事務所ですが、個人事業主の先生方や医療法人のお客様の税務・会計サポートも幅広く行っています。医療法人化に関するご相談から、各種節税対策、日々の会計処理、確定申告まで、トータルでサポートいたします。
- 医療法人化のメリット・デメリット分析とシミュレーション
- 医療法人設立に関する税務アドバイス
- 医療法人の税務顧問(法人税申告、役員報酬・退職金設定の相談など)
- 医療法人における各種節税対策の提案と実行支援
- MS法人設立・活用に関する税務アドバイス
- 日々の会計・経理業務のサポート
- 税務調査への対応
先生方が安心して診療に集中できるよう、東京武蔵野会計が税務・会計の面から力強く支えます。
お問い合わせ・無料相談のご案内
医療法人化や節税対策でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。初回無料相談を実施しています。
- 電話:042-405-3913
- お問い合わせ、無料相談はこちら
東京武蔵野会計は、お客様のクリニック経営を税務の面から全力でサポートします。