
むさし先生!来月末で退職するスタッフから「残った有給を一括消化したい」と言われたニャ。でも今は繁忙期だし引き継ぎもまだだから困るのニャ……。「忙しいから時期をずらして」って会社が拒否することはできるのかニャ?

こじろー君、結論から言うと、退職間際の有休一括消化を会社が拒否することは原則できないんだ。有給消化は労働者の権利だから、退職時は「時期をずらして」が使えないんだよ。今回はこのルールと、引き継ぎを両立させる解決策を解説するね!
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はじめに|退職時の「有休一括消化」に会社は拒否できる?
従業員が退職する際によくある疑問として、未消化の年次有給休暇の取り扱いがあります。退職する社員から「残っている有休を退職日まで一括して取得したい」と申し出があった場合、会社としては業務の引き継ぎや繁忙期との兼ね合いから、どのように対応すべきか苦慮することが珍しくありません。
有給休暇の利用は労働者の権利であるため、労働者が事前に日付を指定して取得することを希望すれば、企業は断れないのが原則です。
なぜ拒否できない?会社の「時季変更権」が使えない理由
通常、従業員から有給休暇の申請があった際、その日が「事業の正常な運営に支障をきたす場合(繁忙期など)」には、会社側は有給の日付を別の日に変更させる権利(時季変更権)を持っています。「繁忙期だから休暇を取得できません」という理由は、通常の勤務時であれば通用することがあります。
しかし、退職時の有休申請においては、この時季変更権が使えないと解されています。なぜなら、時季変更権の行使は「他の時季(別の日)に有給休暇を取得できること」が前提だからです。退職日までの間にすべての有休を消化しようとしている場合、退職した後は有休を使うことができないため、別の日へ変更する余地がありません。したがって、会社は法的に従業員の希望通りに一括取得を認めざるを得ないことになります。
退職時の有休を円滑に処理する2つの方法
引き継ぎや仕掛け中の業務を終わらせないまま有休に入られてしまうと、会社としては大きな打撃を受けます。そこで、業務への支障を防ぐために実務上よく取られる対応策には、以下の2つがあります。
最終出社日と退職日を分けて設定する
退職までの期間に余裕がある場合に効果的な方法です。例えば、年次有給休暇の残日数が20日ある従業員が3月31日に退職する場合、実際に会社にきて仕事をする「最終出勤日」を2月28日などに設定します。そして、3月中の1ヶ月間をまるごと有給休暇の消化期間にあてるという形をとります。これであれば、2月末までに計画的に引き継ぎを完了させることができます。ただし、この方法は退職日までに時間的余裕がなければ実施できません。
未消化の有給休暇を会社が「買い取る」
退職日までに日数の余裕がなく、どうしても有休を消化しきれない場合や、最終日まで出社して引き継ぎを行ってもらう必要がある場合は、消化できなかった分を会社が金銭で買い取るという方法があります。退職者の有休取得そのものを拒否することはできませんが、必要な引き継ぎをこなしてもらった上で、残った日数を買い取ることは、労働者側にとってもデメリットにはなりません。有休を消化しきれずに退職日を迎えると、未消化の有休は全て消滅してしまうため、買い取ってもらえることは民事的な金銭補償としての例外的な対処法になります。
有給休暇の「買い取り」に関する注意点と落とし穴
有給休暇の買い取りを行うにあたっては、法律上のルールを正しく理解しておく必要があります。
・就業規則に買い取りルールを定めてはいけない
有休の買い取りルールを就業規則に明記してしまうと、それが「労働条件」となり、会社に民事上の履行義務が発生してしまいます。そのため、不要なトラブルを避ける観点からも、就業規則に買い取りのルールを定めることはおすすめできません。
・原則として有休の買い取りは禁止されている
労働基準法では、有給休暇の買い取りを原則として認めていません。有休の申請を拒否して代わりに買い取るような行為は違法となります。ただし、退職によって「どうしても消滅してしまう有休」を、事後的に会社側から打診して買い取る行為については、例外的に法律違反には該当しないとされています。また、2年間の時効によって未消化になった日数分を退職時に買い取ることも問題ありません。
・従業員からの買い取り要求に応じる義務はない
会社側から買い取りを打診することは可能ですが、従業員側から「消化しきれないから買い取ってほしい」と要求されたとしても、法的に会社がそれに応じる義務はありません。ただし、未消化分の買い取りをしなくてはならないわけではありませんが、過去に買い取りを行ってきた前例(慣行)がある場合は、応じる必要が出てくるため注意が必要です。
トラブル回避のポイント
退職時の有給休暇の取り扱いは、労働者の権利(時季指定権)と会社の都合(引き継ぎや繁忙期)が最もぶつかりやすく、感情的な対立から大きな労務トラブルに発展しやすいテーマです。
法的な大原則としては労働者側が優位であるため、会社としては「一方的に拒否する」のではなく、退職日や有休取得日の日程調整、あるいは未消化分の事後的な買い取りの打診など、お互いが納得できる落としどころを早期に話し合うことが重要です。少しでも対応に迷った際や、就業規則の見直し、過去の慣行への対応を確認したい場合は、自己判断せず、事前に人事労務の専門家へ相談することが確実なトラブル回避へとつながります。
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