中小企業のガバナンス「会計限定監査役」とは?そのメリット・導入手続き

こじろー君

むさし先生!うちの会社もそろそろ「監査役」を置こうか考えているんだけど、知り合いから「会計限定監査役」なら責任も軽くて適任者を見つけやすいって聞いたのニャ。これって名前だけの形ばかりの役職にしても大丈夫なのかニャ?

むさし先生

こじろー君、監査の範囲を会計に絞ることで引き受け手が見つかりやすくなるのは事実だよ。でも「名前だけ」は絶対にNGなんだ。最高裁の判例でも、会計限定だからといってチェックを怠ると重い責任を問われることが明言されているから注意しようね!

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はじめに|中小企業における監査役の設置傾向

現在の会社法では、株式譲渡制限会社であり大会社ではない中小企業において、監査役の設置は義務付けられていません。そのため、コストや人材確保の観点から監査役を置かないケースも多く見られます。

しかし、中小企業であっても「取締役会を設置する会社」や「会計監査人を設置する会社」など、企業の規模拡大や上場準備(IPO)の段階に移行すると、法律上あるいは社会的信頼性の確保のために監査役の設置が必要となります。こうした場合に、実務のハードルを下げる選択肢として活用されているのが「会計限定監査役」です。


「会計限定監査役」とは?通常の監査役との違い

通常の監査役は、会社の「会計監査」に加えて、取締役の業務が法令や定款に違反していないかを厳しくチェックする「業務監査」という非常に広い権限と責任を持っています。

これに対して「会計限定監査役」は、職務の範囲を「会計」に関するものだけに限定した監査役です(会社法第389条)。業務監査の権限を持たない代わりに、決算書などの計算書類の監査や報告書の作成といった、会計面のチェックに専念する役割を担います。

会計限定監査役を導入するメリットと2つの手続き

業務監査という重い責任を負わない分、社外の信頼できる知人や専門家などから「適任者を確保しやすい」という点が最大のメリットです。導入にあたっては、以下の2つの手続きが必要になります。

  • ⑴ 定款変更(株主総会の特別決議)
    株主総会を開き、議決権の3分の2以上の賛成を得て「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する」という旨を定款に定めます。
  • ⑵ 法務局での登記
    定款変更の日から2週間以内に、管轄の法務局にて登記申請を行う必要があります。

なお、会計限定となった監査役は取締役会への出席義務もなくなるため、社内の会議運営などの実務負担も軽減されます。

「名義だけ」は通用しない!裁判例に見る監査役の重い責任

実務や就任のハードルが下がる便利な制度ですが、「名前だけ貸してくれれば、中身は何もしなくていいよ」という運用は極めて危険です。職務の範囲が会計に狭まったとしても、その責任の重さ自体が変わるわけではないからです。

この点について、非常に重要な最高裁判例(令和3年7月19日判決)があります。これは、従業員による横領(残高証明書の偽造)を会計限定監査役が見抜けなかったという事案です。下級審では「会計帳簿の確認だけで足りる」とされていましたが、最高裁はこの判断を覆し、「会計限定監査役であっても、計算書類の信頼性を担保するためには、必要に応じてその基礎となる残高証明書などの資料をしっかりと確認する義務がある」と判示しました。

過去の下級審でも、チェックを怠った会計限定監査役に対して「任務懈怠(にんむけたい)責任」による損害賠償を認めた事例が複数あります。名義だけを借りた「形だけの監査役」が実質的なチェックを怠っていると、万が一社内で不祥事が起きた際、その監査役個人が巨額の責任を追及されるリスクがあるのです。

トラブル回避のポイント

会計限定監査役は、中小企業の組織体制を整える上で非常に有効な制度ですが、その責任の本質を正しく理解せずに「名義貸し」のような形で設置することは絶対に避けるべきです。

会社のガバナンス(統治体制)を強化し、将来のIPOや資金調達を円滑に進めるためには、形式的な役職作りに終わらせず、外部の公認会計士や税理士などの専門家と連携しながら「実態を伴った適正な監査が行われる環境」を最初から構築しておくことが、最大のトラブル回避へとつながります。

東京武蔵野会計のサポート内容

東京武蔵野会計は、企業の成長段階に合わせた「未来志向の経営支援」や「IPO準備・M&A支援」に強みを持つ会計・税理士事務所です。制度の導入から、リスクのない強固な社内ガバナンスの構築まで伴走いたします。

  • 貴社の事業規模や将来設計(IPO志向など)に合わせた、最適な役員・機関設計のアドバイス
  • 会計限定監査役の導入に伴う、定款変更および議事録作成等の手続きサポート
  • 最高裁判例を踏まえた、監査役がチェックすべき会計上のポイントや実務フローの指導
  • 安心の「書面添付制度」標準採用による、社内データの信頼性向上と税務調査リスクの低減
  • クラウド会計等を駆使した、監査役もリアルタイムで確認しやすい透明性の高い経理体制の構築

お問い合わせ・無料相談のご案内

監査役の設置や「会計限定監査役」の手続きについて検討されている方、将来のIPOや組織変更を見据えて社内体制を強化したい経営者様は、お気軽にご相談ください。初回無料相談を実施しています。

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